甘酸っぱくてイチゴのジャムにむせている

買い物に出かけた果実店で2kgの木箱入りのイチゴが並んでいた。その姿から姉のイチゴの味を思い出して見つめてしまった。
趣味の域を越えた姉の手作りのイチゴはそれは美味しく、年に一度のいちご狩りは子供が小さい時から楽しみにしていた。子供が大きくなってからも孫が大好きな味となって、イチゴをもぎながら取り立てを口の中に入れる仕草はそのまま幸せの姿として思い出す。たくさんいただいて帰ったイチゴで作るジャムの味はたとえ様もなく美味しかった。これをオットセイは大好物で、毎朝マーマレードと交互に楽しんだものだった。その姉が80歳になろうとする昨年、急にやめると言い出した。パターゴルフなど友人と一緒に楽しみたくなったのだそうで益々若返った。
それから、美味しかったあのイチゴにはお目にかからなかったような気がする。
店主に「これ朝取りですよ、一味違いますよ」と声をかけられた。
木箱に無造作に詰められた2kgのイチゴ、あの顔をしていた。「下さい」「2000円です」「木箱は重いので紙に入れ替えていただけませんか」。
抱えて帰って、ヘタを取りすぐレモンとグラニュー糖1kgをふりかけた。菜園に草取りに出かけ、夕食後、じっとりとグラニュー糖が溶け始めている。アクを取りながら強火で一気に炊き上げた。
部屋中があの懐かしい甘酸っぱいジャムの匂いでむせ返った。私の血が騒ぎ立てている。ほとんど病気のジャム作り。