白百合の思い出がある夏の山

少し台風の影響かもしれないなどと、午後の風のきつさをベランダで受ける。開け放した窓から入り込んだ風が書類をさらっていく。先日の台風で葉が傷んだ百合の花が今朝咲いた。今日の風で折れては叶わないからと切り込んで一輪挿しに。見る間に満開になってきた。
40年位前の、あの夏の日の思い出に白百合がある。六甲山に登って休んだ熊笹の生えている頂上で、人の心を見透かすように白百合が小首をかしげて二組の登山客の話を聞いていた。どこの誰かとわからない人との会話。それでも自然だった。白百合が咲く山が暖かかった。百合の姿に生ぬるかったモモを一緒にかじったあの山の出会いを時々キューンと思い出す。